「ハマる」側から見ると、理不尽極まりない。地獄ですね。
日大・内田前監督からの圧力指導を「ハマる」と選手が呼称 関東学連調査で判明
■「ハマる」罠は日常に多く潜んでいます
今回は極端な状態で表れて非日常感が満載かもしれませんが、「ハマる」関係を作り出したい欲求はいろんなところに潜んでいます。
「ハマる」を作り出す側に冷静に立ってみると、きわめて合理的な意図が透けて見えます。愚かだからではなく、合理的だからこそ「ハマる」を仕込んでしまうのです。私自身の経験では、特に夫婦関係・親子関係でやりがち。相手の気持ちに寄り添うという「迂遠」なコミュニケーションをするよりも、ずっと楽ですから。忙しい自分を正当化し、相手を卑下する構図を作りたくなるものです・・・。
「ハマる」を作り出すことで、相手の自尊感情を破壊し、明確に力ある自分に対して依存させることができるようになるからです。
自立していると、本人が自由意思で判断します。白いものは白いし、黒いものは黒い。目の前の人が喜べば喜べるし、苦しみを苦しみと捉えることができます。本人が自由意思で判断されるということは、自分の決定の納得感を得られなければ、その人は離れていくことになります。子供に「10時に寝なさい」、と言っても、自由意思を子供が十分に持って入れば「なんで???」と聞き返されるわけです。
ここで、本人の自由意思を破壊し、自らに依存させることができれば、自分の決定に納得感が無くても従わせることができます。白いものも黒と言わせることができるようになるのです。「10時に寝なさい」といえば、反射的に寝てくれるのです。楽です。。。
こうしたいびつな関係でも、周囲から一見するだけでは、周りがついてきているように見えます。リーダーシップがあるように見えます。フォロワー(子供)に聞けば、当たり前のように、素晴らしい指導者(親)だと、言うでしょうから。フォロワーとして従えば有形無形の飴(お小遣いとか、誉め言葉)をもらい、離れれば鞭(けなされる、外出禁止)をもらうようになると、次第に、心がマヒして順応してきます。本当に素晴らしいリーダーに思えるようになるものです。そして苦痛の面持ちのコーチのように離れられなくなるのです。
ここに、自立無き依存のスパイラルが発生します。
「ハマる」を作り出す側は、長年の経験で、「ハマる」を作り出すことに何度も成功し、そして、自立無き依存のスパイラルを通じて、様々な利得を得たのでしょう。
利得を得たからこそ、その行動が強化され、繰り返され、洗練されていく。
人の心を置き去りにすることで洗練された営みは極めて強力になり、「ハマる」状況を簡単に作りだすことができるし、「ハマる」状況を安定化させることにもなります。なぜならば、次第に、「ハマる」状況を体系化し、その体系が正しいということを信じ込ませる力と実績を持つからです。
■「ハマる」から抜け出すためには?
頭で考えるのではなく、心で感じる、魂の直感が極めて重要になります。直感が、理性を超えたときに、何とかこの依存のスパイラルから抜け出すことができるようになるのです。
良き人間関係、すなわち、愛を体感していることは重要です。うまい料理をうまいと感じて、まずい料理をまずい、と感じられるのと同じように。その人間関係を知らないと、何が良くて何が悪いか混乱し、自立無き依存のスパイラルに嵌め込まれてしまう危険性が高まります。
この良好な人間関係の在り方を知っている人は幸せになれるというハーバードの研究があります。
そのためには、基礎的な関係性(家族、職場、学校など)が愛に満ちた関係であることが重要です。良き関係性を知っていれば、「ハマる」を仕掛けられても、おかしい!と思えるようになりますから。
健やかな世界でありますように。