映画「ハクソー・リッジ」と価値観

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「ハクソー・リッジ」をみたスタジオジブリ・プロデューサー鈴木敏夫さんの以下の言葉、その通りだと思います。

信じるモノがあれば、人は強く、強くなれる。

社会が憎しみに満ちている中でも、リスクに満ちた戦場の中でも、信じるモノ「価値観」に基づいて行動し続け負傷兵を救い続けた衛生兵の実話です。

浦添における日米両軍の戦闘は実に激しく、当時の浦添村の状況は住民の44.6%にもおよぶ4,112人が死亡。 一家全滅率も22.6%という状況で、多くの住民が犠牲となりました。

引用:浦添市ホーム・ページ『ハクソー・リッジ』の公開によせて

現代の戦いは、社会的同調圧力、すなわち規範意識を極端に強めます。戦争に勝つためには、国民の持つ全ての資源を動員して、戦争に勝利するために戦わなければなりません。普段、心やさしき家族の一員も兵士として訓練し、前線に送り込み、戦闘を強います。戦争に全てを捧げることが、良いこととされます。法令への記載の有無にかかわらず、社会的に良いとされる同意された考え方が規範意識です。

強い規範意識の中で個人的価値観を保持し続けると、その個人は苦難に満ちます。社会が向かっている方向に、個人を動員するために規範が形成されたのだから、その規範に乗らない個人は、いたたまれなくなるはずです。村八分にされます。

しかし、強い個人的価値観を持つからこそ、命の危険がある中でも献身的行為に出られるという姿をこの映画で確かめることができます。

映画の主人公のデズモンド・T・ドスは、愛国心を持ち、戦争に協力しようとします。一方で、自分の宗教的価値観とアル中の父親との確執で生じたトラウマから、銃をとることを拒否します。戦争に志願兵と参加しながら、銃を持たない。仲間からのリンチも、上官からの嫌がらせも、軍法会議を受けようとも、銃は持たず戦争には参加する意思を示し続けます。

このドスの強固な価値観は、ハクソー・リッジの死闘の最中に発揮されます。先発部隊が6度攻略を試みて、6回とも撃退された末に壊滅した激戦地です。ドスの部隊が先発部隊と交代し、攻略にかかるものの、血みどろの白兵戦が繰り広げられます。混沌とし、他の衛生兵は後方に後退した中でも、前線に取り残され、救いを待つ負傷兵を助ける行動を続けます。日本兵に見つかれば狙われる恐怖の暗闇の中で傷ついた兵士(日本兵もその対象でした)を救い続ける行動を続けました。

価値観とは、かくも強いもの。

地獄の戦闘の中でも、軍隊という絶対服従の組織の中でも、この夜陰の先に何があるのか、自分の命を狙う人がいるのか、自分の助けを待つ人がいるのか分からない中でも一歩、踏み出す勇気を与えてくれるものです。

価値観を見つけた人は変わります。私がリーダーシップ開発をコーチングでお手伝いする中で、価値観を見つけた人が変わった姿に多く接してきました。今まで、立ち止っていた人が、突如として、力強く前に進み始めることができるようになります。独立する、結婚を申し込む、転職する、自らの考えを組織に提案する。人が価値観に気づいた時、その動きは周りを動かしていく力を持ちます。価値観に気づいた人は、強く、逞しく、恐れなく前に進み、そして周囲の協力を得られるようになります。

価値観の力強さを理解できる映画でした。

最後になりますが、1945年6月、沖縄戦で命を落とした方々に哀悼の意をささげるとともに、悲惨な戦争を繰り返してはならないと誓います。

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