「リンカーン」から学ぶ熾烈なリーダーシップ

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2016年でもっとも感銘を受けた映画を紹介します。

リンカーン』(スティーブン・スピルバーグ監督)です。

偶像視されるリンカーンの人間としての物語です。彼が政治を動かしたのは聖人君主然とした振る舞いではなく、さまざまな反対者と向き合う繊細さと胆力があったからです。

アメリカ合衆国憲法修正第13条

第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とするときを除く。

第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。

Wikipediaより)

リンカーンは、この修正憲法第13条を国会で通しました。

映画は、この条文を下院で通す4か月の話が描かれています。このために、リンカーンは、凄惨な南北戦争を継続し、犠牲者を増やしています。与党内の政治工作と取引をし、恫喝・買収をしながら野党を切り崩し、議会に虚偽の報告をする。近しい関係性の中でも、腹心への嘘と失望、妻と息子からの反発に向き合っています。

リンカーンの懊悩は深く、時に叫び、時に怒っています。妻から「10年歳をとった」ともいわれます。今までの教科書に載っている偶像としての「リンカーン」とは全く違う姿を見せてくれます。

リンカーンのように、自分の理想に向けて、力強くありたいものです。

しかし、なぜ、リンカーンは心折れずに、この難局を切り抜けたのでしょうか?

そのヒントは映画の中のワンシーンにあります。リンカーンは、家族が寝静まったベッドの傍で、軍法会議で死刑判決を受けた少年兵のために赦免のサインをしています。両軍合わせて50万人近くの犠牲者が出た戦争で、この赦免は政治的にも経済的にも、ほんの僅かな出来事だと思いますが、リンカーンの表情は、静かな充足感に満たされています。リンカーンは、本当に、しんどい時期に、自分自身の心の奥底に眠る繊細な愛を再確認しながら力を得ていたのでしょう。

プロフェッショナル・コーチとして、私は、リンカーンの静かなフルフィルメントを、このシーンに見ます。フルフィルメントは、現実に立ち向かうエネルギーを授けてくれます。

この映画の監督であるスピルバーグの言葉です。

彼は政治の天才だった
広い視野を持ちつつ 常に理想を忘れない
将来を見据えながら 過去を忘れなかった
自分の内面を見つめることでそれを成し遂げたんだ

「リンカーン」インタビュー
監督スピルバーグ”最も愛された大統領への思い”)

奴隷制を作り上げたのが人間であれば、奴隷制を廃止したのも人間です。人類は、多くの困難を超えてきました。

社会の在り方が大きく動いてきた2016年に、人間の持つ力を信じて、2017年を迎えます。

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