中学受験のために毎週のようにテストを受け続ける息子を見て思ったこと;
- テストで良い点をとりつづけることに心を囚われると、とんでもない苦しみに陥る
- 世間的に評価されることで人生が満たされるとする間違えたメッセージは、色んなところに潜んでいる
- 僕自身が、約20年間、「他人の考え」に心を囚われていて、苦しんできたからこそ伝えたい
- 「何より大事なのは、自分の心と直感に従う(follow your heart and intuition)勇気を持つこと」(スティーブ・ジョブス)
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うちの息子が、中学受験をしようとしている。がんばることは良いことだと思う。本人が挑戦したいのであれば、純粋に応援したい。
そこで、僕が、繰り返し言っているのが、「合格したから人生が満たされるわけでも、不合格になったからといって不幸になるわけではない」、ということ。テストで良い点をとったから人生がバラ色になるわけでも、テストで悪い点をとったから人生が苦渋にみちたものになるわけでもない。しかし、進学塾から発信されるメッセージには、真逆の物語が仕込まれているように感じる。
別に進学塾だけではない。世間的に評価されることで人生が満たされるとする間違えたメッセージは、色んなところに潜んでいる。だから、気をつけないと、すぐ、誤解してしまう。
いくらテストで良い点をとっても、良い中学校に行っても、自動的に幸福になるわけでもない。逆にテストで良い評価をとり続けることに心を囚われると、とんでもない苦しみに陥ることになる。
スティーブ・ジョブスが、他人の考えに溺れることを戒めている。
あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う(follow your heart and intuition)勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。
偉そうに言っているが、僕自身、約20年間「他人の考え」に溺れ、苦しんできた。
僕は、20代までは、仕事で評価されれば人生が満たされると信じ込んでいた。会社の中で良い点(=目標を達成し、周囲から認められる)をとって、昇進・昇給すればきっと幸せになると信じ込もうとしていた。何か間違っていそうだという心の声は聞こえるけど、その声は横に置いた。
この評価至上主義の結果は、人事評価に激しく一喜一憂する不安定な精神生活になった。昇進・昇給をしないと落胆し、他人が自分より早く昇進すると強い嫉妬に襲われた。そして、首尾よく昇進・昇給しても、世の中の人と比べてまだまだ十分ではないと嘆いていた。常に渇望感があった。だから、がんばった。よくがんばったと思う。がんばる、評価される、そして、がんばる、評価される。この果てしない渇望と努力の繰り返し。会社から何回か表彰もされ、周囲から認められたが、家族との距離は空くばかりで、人生は苦渋に満ちたものだった。
30代になり、仕事でいくら良い評価をもらっても僕自身の人生が満たされるものではないことに気づいてしまった。突如、人生の羅針盤を失ったわけだ。そして、深く、しつこく、根深い寂しさに襲われた。自分の中で蓋をしていた「何か」が思わずこみ上げてきた。一回こみあげてきたら、押さえることができなくなってしまった。その「何か」は繰り返し、ささやいてくる。迷い、惑った。しかたない。20年間つきあってきた人生との向き合い方を変える必要があったのだから。
今から思えばこの「何か」は、「自分の心と直感」の声だったと思う。抑え込まれていた「自分の心と直感」が強力にわめき始めたのだ。そして、「自分の心と直感」から遠く離れた「他人の考え」に溺れた当時の当時の生活に対して強烈な警告音を鳴らしはじめた。
この極めて不快な生活から抜け出るためには、パラレルな生き方を歩み始めることが、僕には必要だった。コーチング養成機関(CTI社)のクラスを受講したらと信頼できる人から薦められ学び始めたこと、そして、キャリア教育のボランティア(GRA)を始めたことが本格的なパラレルな生き方の第一歩となった。どちらも、会社の評価には直結しないし、お金も時間もかかる営みだった。かつての評価至上主義から見ると、馬鹿みたいなことを、始めたのだった。周囲から「何をしているのか?」と疑問も多く投げかけられた。心配してくれる人も多かった。別に意地悪では無く、親切心から声をかけてくれていた。実際、会社からの評価は過去とは全く違う評価になった。ただ、僕はやめるどころか、どんどんとパラレルな生き方に踏み込んでいった。パラレルな生き方の中で、自分の心と直感に従いながら歩む中で、少しずつ、少しずつ、警告音が小さくなってきた。
様々な行動と学習を通じて、少しずつ自分自身の心の奥底に眠る「自分の心と直感に従う」(follow your heart and intuition)ができてきたのだ。
だから、他人の評価ではなく、「自分の心と直感に従う」(follow your heart and intuition)ことを、息子にも、家族にも、そして、接するすべての人に伝えたい。
なぜなら、20年という年月をかけて、僕自身が苦い経験から学びとった重要なものだと思うから。もちろん他人の評価を無視すればいいわけではない。他人の評価には多くの意味がある。付き合い方を間違えさえしなければいい。評価については明日書きたいと思う。
同じ引用になるが、今度は原文で・・・
Most important, have the courage to follow your heart and intuition.
—Steve Jobs
ぜひ、一人ひとりが「自分の心と直感」から生きて欲しい。もちろん息子にも。ただ、息子がこのブログを目にすることは、すぐには無いだろう。
では、誰に伝えたかったのか?
中学受験のために毎週のようにテストを受け続ける息子を見て、改めて「自分自身」に伝えたいと思った、ということだ。